弁護士由井照彦のブログ

法律の視点からの社会・事件やリーガルリサーチについて

にほんブログ村 政治ブログ 法律・法学・司法へ

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

故意と過失の境界線?−危険運転致死罪の特殊性

10/11〜10/15まで4回投稿した事件の続報で容疑者が危険運転致死罪で起訴されたとのことです。 前回投稿では「故意」の悪質性に着目した説明でしたので、故意と過失の境界線ははっきりしている、というイメージを持たれたかもしれません。しかし、今回の事件…

大事なのは「きまり」?−「何を決めていたか?」を明確に

記事のように茶色の地毛を黒く染めるよう強要するのは、黒以外の髪色という特定の身体的特徴を蔑んでいるとの見方は十分あり得ますので、本件で人権や人格的利益が論じられることは当たり前といえば当たり前です。 しかし、「人権」「価値観」の議論は妥協が…

刑は有限?−刑の「重さ」を考える

ここ3回の投稿で高速道で自動車を停止させた死亡事故を題材に刑法の思考を説明しましたが、これに対し、事件の悪質性や被害者の残された子を考えると「死刑か無期懲役くらいじゃないと納得出来ない」という意見をいただきました。一般の方の感覚としては当…

どれくらい塀の中に?−言い渡される刑の幅

一昨日、昨日の投稿で刑法がより悪質な犯罪を抑止しようとしていること、故意の判断プロセス等を説明したところ、「被害車両を停止させた容疑者と後ろから追突したトラック運転手が同じ罪名なのは納得がいかない」というもっともなご指摘がありました。そこ…

心の中をどう覗く?−故意は周りから

昨日の記事について、「一般人は殺人で起訴できるかも知れない」と思っているという鋭いご指摘を受けました。そこで、刑法が強い社会的非難が向けられ、重罰を科すべきと規律する「故意」についての判断過程を少し説明しようと思います。 昨日説明したとおり…

「殺す」と「死なせてしまう」の差−法律は実は甘くない

記事のような悪質な過失致死事件が報道されると「人を死なせたのに過失致死程度だなんて」「殺したも同じだ」というような人が一定数います。そして我が国の刑法(特別法を含みます)やその運用に携わる裁判官・検察官・弁護士を「甘い」と評価する人もそれ…

内部留保に課税する?−収得税と財産税で議論を整理

希望の党が公約として消費増税を凍結し、代替財源として企業の内部留保への課税を検討していることについて「内部留保=悪だというのは共産党と同じリベラルで左な発想だ!」vs.「消費増税凍結のためには仕方ない」等という恐ろしく粗雑で中身がわかりにくい…

保守やリベラルって何のこと?−憲法の規定から整理すると

総選挙公示を控えて政党再編が喧しく、「穏健な保守」「リベラル」等という思想用語のようなものが飛び交っています。しかし、そもそも「保守とは何か?」「リベラルとは何か?」について明確に語られることが少なく、議論が非常にわかりにくくなっています…

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ