弁護士由井照彦のブログ

法律の視点からの社会・事件やリーガルリサーチについて

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2016-01-01から1年間の記事一覧

租税回避と課税当局の戦い

ロナウドらサッカーのスター選手が租税回避をしているとの報道が続いています。 10/26の記事にも書いた通り、租税回避は租税公平主義(等しき者には等しく課税・異なる者には異なる課税)と租税法律主義(租税を課すには事前に明確な法律で定める)が両立し…

賭博罪とカジノ

カジノを特区で解禁するか否かの議論が「経済効果vs依存症等の害悪懸念」という構図で論じられていますが、そもそも我が国で賭博はどのように扱われているか、という基本を抑えることは重要です。 賭博についての原則は刑法に定めがあり、 刑法185条「賭…

家族と専従者控除−婚姻と税のややこしさ4

日本においては配偶者控除という税の問題と、企業が行う配偶者手当が何故か連動しているため、配偶者控除見直しの議論が出ると、記事のように企業の支払う給与にまで問題が波及します。 ところで、税が婚姻に配慮している制度はほかにもあり、配偶者控除の議…

共謀や共犯とは一体何か?

暴力団犯罪に限らず、複数の人が関与する犯罪について、容疑者が「共謀を否認している」という報道がなされていることはよくあります。この報道から事件や犯人相互の関係性等を想像するには、そもそも「共犯とは一体何か?」を知ることが有用です。 刑法は「…

租税回避への対処法

記事のように富裕層を国税庁が監視するのは、9/30に書いた租税回避への対応の1つです。 しかし、租税回避と言われても具体的にはどのような事態・行為なのかがイメージしにくいと思います。そこで、租税回避の「最も素朴な」手法である同族会社における租税…

外国での犯罪を処罰できるか

国際間の移動が容易になったことから、記事のように外国人が日本で犯罪を犯して、すぐ出国し母国に帰るという事態は増えてきています。 その場合に犯罪地の国が相手国に求める対応は大きく分けて①身柄の引渡し、②代理処罰の2つです。 身柄引渡しは犯人を国…

事実はなかなかわからない

高畑氏の件では、当初報道・弁護人の声明・後追い報道数種、と色々なことが報道されています。このことは、私たち弁護士などの法曹の考え方の一端を説明するのにとても示唆的です。つまり、「事実はなかなかわからない」ということです。 司法試験に受かると、…

そもそも所得とは何か?−婚姻と税のややこしさ3

配偶者控除と夫婦控除については、百家争鳴となった上で、先送りされそうです。 我が国の税収の52.6%が所得税・法人税・住民税・事業税等の「所得」に対する課税です。また、資産に対する課税の内、贈与税と相続税は所得に対する課税とも考えられる税です(…

法律の「趣旨」の考え方−ゲス極川谷氏を題材に

彼の恋愛スタイルはある意味一貫しているように見えますが、それはともかく、今回の件で「法的に悪いのは飲酒した未成年者か?飲ませた成年者か?」を考えることは、私達法律家がいつも気にする「法律の趣旨」を説明するのによい題材です。 「法律の趣旨」と…

租税回避の何が問題か?

パナマ文書の発見により、租税回避地(タックス・ヘイブン)を利用した、不当な税金逃れが問題となっています。しかしそもそも、「租税回避」と「脱税」はどう違うのか?脱税ではないのに何が問題なのか?等、基本的事項ついては意外と知られていません。 ま…

暴力団は財産を持てるか?−権利能力と法人制度

「組長に使用者責任を認めた」と聞くと「『組』以外に組長の責任も認めたんだ!」と思う人がいますが、実は違います。 まず、「責任を認める」とは要するに損害賠償金を支払う「義務」がある、ということです。「義務がある」という以上、何らかの財産を持っ…

婚姻と税のややこしい関係−その2

配偶者控除から夫婦控除へという流れのようですが、以前にも書いた通り婚姻と税はややこしい関係にあります。前回は婚姻するかしないかに着目してややこしさを説明しましたが、今回は「担税力」との関係を少し説明します。 担税力とは税法のキー概念の1つで…

キセル乗車の悩ましさ

キセル乗車は、一般には身近でイメージしやすい犯罪ですが、法律的には中々ややこしい犯罪類型です。 適用される罪名は、(鉄道営業法28条違反を除けば)詐欺罪であり、 刑法246条「①人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 ②前項の…

リーガルリサーチのITリテラシー

現在、リーガルリサーチをするにあたり、電子データベースの利用は必須というか不可避です。 したがって、リーガルリサーチにおいても、ITリテラシーが重要であるということになります。リーガルリサーチにおける技術論の中心がこの検索技術=ITリテラシーだ…

リーガルリサーチに理論は必要か?-判例検索を題材に

判例検索の手法を考えるにあたって、弁護士はそもそも何故判例を探そうとするのか?について考察することは必須かつ有益です。 判例を探す理由を、思いつくままに挙げると、①法理ないし判例理論を探す、②判例理論の射程(特に限界)を探る、③自分の事件と似た…

身代わり犯人を頼むのも引き受けるのもマイナスしかない

犯人の知人や家族が本人の身代わりに自首する、という事件は交通事故を中心にしばしば見られます。その際に適用されるのが、記事にもある「犯人隠避罪」という罪です。 これは、 刑法103条「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵…

リーガルリサーチについて経歴の自白

リーガルリサーチについて、ちまちまと書いていこうと思っています。 ブログ主である由井は弁護士になる前、第一法規株式会社に勤めていたことがあり、判例体系の編集やそのWeb商品である「D1-Law.com」編集に携わっていました(但し、下っ端)。 同社退職後にロ…

「法律は条文文言が決定的に大事」−蓮舫氏二重国籍問題を題材に

蓮舫氏の二重国籍問題についての議論の前提としての法律の規定について、国籍法と別の観点から説明します。ここで説明したいのは蓮舫氏の二重国籍の問題性ではなく、「法律は条文文言が決定的に大事」という法解釈の基本的スタンスについてです。 蓮舫氏が台…

国籍を選択する・離脱するとはどういうことか。

政治的立場と絡めて色々と議論がありますが、前提となる法律の規定を見ておくと、まず、国籍法2条「子は、次の場合には、日本国民とする。一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。(略)」であり、親が日本国民であれば、子は日本国籍を取得します。 …

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