弁護士由井照彦のブログ

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そこに愛はあったの?ー「淫行」とされるSEXとは

個人的には17歳の女性から「23歳」と言われて、嘘を見抜く自信はありませんが、それはともかく、英孝氏の行為の何が問題か?は、それほど単純な話ではありません。

この問題を考えるにあたっては、我が国の法律が未成年者とのSEXについて、どのようなスタンスであるかを知る必要があります。

まず、(強姦等の犯罪を除けば)SEXと最も関係が深い法制度は間違いなく「婚姻」という民法上の制度だと思います。
民法は夫婦間の義務として貞操義務、すなわち配偶者以外とのSEXをしてはなならないという義務を定め(民法770条)、夫婦間に生まれた子どもには「嫡出子」という一種の身分を与える(民法772条)等、夫婦間でのSEXを前提とする権利・義務等を定めています。

そして、結婚は女性は16歳、男性は18歳になれば可能です(民法731条)。

親が未成年者である間は子どもを作ってはならないとの規定は無く、未成年者がSEXをすることがあることは民法は前提としています。更に、未成年者の結婚の相手が成年者であってはならないとの規定もないので、成年者と未成年者がSEXすることがあることも民法は前提としていると言えます。

ここで、「(少なくとも)未成年者の、又は未成年者とのSEXは結婚後に行うべき」との意見があり得ますが、民法789条は未婚の者同士の間に出来た子どもについて、両親が結婚すれば嫡出子の身分を取得すると定めており(準正といいます)、婚姻前にSEXをすることがあることも前提としています。そして準正について、成年者と未成年者を区別する規定はありません。

以上のことからは、我が国の法制度上最も基本的な法律の1つである民法上は未成年者がSEXをし得ることを前提としており、少なくとも未成年者とSEXをすることを非難するような価値観は採用していません。

英孝氏の行為が問題と言われているのは、いわゆる青少年保護育成条例の規定によるのですが、例えば東京都青少年の健全な育成に関する条例は、

(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第18条の6 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。

と定め、違反者に刑事罰を課しています。

これは単純に見ると、上記民法の原則と反するように見えますが、表題及び条文に「反倫理的」「みだらな」という文言があるのがポイントです。これは民法の原則に対して、①特定の目的・趣旨で、②目的等に必要な限度で、例外を定めたものと考えられます。

判例は、①淫行処罰の目的・趣旨について、

「一般に青少年が、その心身の未成熟や発育程度の不均衡から、精神的に未だ十分に安定していないため、性行為等によつて精神的な痛手を受け易く、また、その痛手からの回復が困難となりがちである等の事情にかんがみ、青少年の健全な育成を図るため、青少年を対象としてなされる性行為等のうち、その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止することとしたものである」

 とします。つまり、青少年に悪い影響を与えるような形態のSEXから未成年者を守ることが目的であるとします。

そして、②上記のような悪いSEXから未成年者を守るために禁止すべき「淫行」の意味は、

「『淫行』とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為をいうものと解するのが相当である。」

とします。

つまり、淫行処罰で罰せられる「みだらな性交」をSEX全般ではなく、不当手段によるものや自己の性欲を満足させるためだけのものに限っています。

どのようなSEXが上記判例に言う「淫行」にあたるかは、個々の事実関係によることになります。
しかし、少なくとも真摯な交際からのSEXが判例の言う「淫行」にあたらないことは明らかです。

これはつまるところ「そこに愛はあったの?」を問うこととある程度重なるのではないかと思われます。

headlines.yahoo.co.jp

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