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弁護士由井照彦のブログ

法律の視点からの社会・事件やリーガルリサーチについて

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そもそも所得とは何か?−婚姻と税のややこしさ3

配偶者控除と夫婦控除については、百家争鳴となった上で、先送りされそうです。

我が国の税収の52.6%が所得税法人税・住民税・事業税等の「所得」に対する課税です。また、資産に対する課税の内、贈与税と相続税は所得に対する課税とも考えられる税です(異論はあります)。

日頃話題になることの多い、消費課税は消費税・酒税等全て合わせても、税収の33.7%に過ぎない(消費税単独では17.1%しかない)ことを考えれば、「所得」課税制度が私達の暮らし・企業活動に大きな影響を及ぼすことがわかると思います。だからこそ、所得税制を改正しようとすると、今回のように議論が百出するのです。

したがって、税又は配偶者控除等に対する自分の考えをまとめるにあたっては、そもそも「所得」とは何か?、という視点を持つことは有益だと思います。

「所得」というのは、端的には「経済的な利得」であると言われます。ある人に経済的な利得があれば、その中から税を支払う能力、すなわち担税力が発生することになるので、所得の一部を税として徴収しよう&徴収するのが公平だ、というのが所得税法人税等の基本的な考え方です。

しかし、問題はその先にあります。
「経済的」ですから、「善意」とか「燃えるような恋」とかは、所得には含まれません。
他方で、経済的に評価できる「利得」であれば全てが「所得」に含まれ、金銭に限られないことになります。

そのため、例えばある土地を持っていて、その土地の近くに駅やスーパーができて土地の値段が10倍になったとします。自分の土地の値段が上がったのですから、「経済的な利得」は明らかに発生しており(いわゆるキャピタル・ゲイン)、担税力もありますから所得として課税されるべきことになります。
しかし、当然ですが実際には売ってない以上、土地所有者の手元には現金が無く、また、その後に価格が下がるかもしれず、税を価格上昇時に徴収するのは技術的に困難です。
ですから、キャピタル・ゲインは土地売却時に精算的に課税することになっています。

また、専業主婦の家事労働(内助の功の1つ)も実は所得です。
9/29のオルドマン−テンプルの法則の説明の際に少し書きましたが、共稼ぎ世帯やひとり親家庭では、子どもを託児所に預けねばならず、費用がかかりますが、専業主婦世帯ではそれがかかりません。これは、専業主婦の家事「労働」により、託児所費用分の経済的利得がその家庭に発生していると考えることができます。したがって、家事労働についても対価等を計算して「所得」を算出し、課税すべきと考えるのが素直です。
しかし、これまた当然ですが家事労働の額を算定することは不可能であり、税を徴収するのは技術的に困難です(キャピタル・ゲインと異なり、タイミングの問題ですらありません)。

税の徴収が困難である以上、現行法上納税義務はもちろんありません。9/29のオルドマン-テンプルの法則もこれを前提にしています。

しかし、所得が発生している=担税力がある以上、本来は課税するのが「公平」と言えるのも確かであり、したがって、この点について何らかの調整的な制度を設ける方が「公平」ということになります。

配偶者控除や今後導入されるかもしれない夫婦控除には、婚姻中立性、女性の社会進出、103万円の壁問題、国の財政事情等複雑な事情や目的が絡み合い、議論が非常にわかりにくくなっています。
わかりにくい議論を理解するためには、それぞれの事情・目的を1つ1つ分解して、考えることが必要であり、分解・分析の道具の一つとして、上記の所得概念を使うことは有益だと思われます。

headlines.yahoo.co.jp

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